BEATS GO AROUND

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※フリーダウンロードの回数に上限があります。ダウンロードができなかった場合は翌月までお待ち下さい。

-Overview-

BEATS GO AROUND

1.草枕 feat.PHARMAKON
2.A HOLY MOUNTAIN
3.よあけまへ
4.円奏 feat.PHARMAKON
5.YIN YANG BACKASS

Written, produced and arranged by 儚屋 玄
Exept YIN YANG BACKASS produced by イヤンバッカス
草枕、円奏 written by
PHARMAKON – 応捨庵 粗粕、滑肉門 空練、風安亭 緑青 –
Mixed & recorded by da riverside studio “Good Luck Temple”
Mastered by Cangjie
Oil painting by 牧村 収三
Wood cut by 儚屋 玄

2016年、儚屋玲志の呼びかけのもと、儚屋本舗の創設に参画した儚屋玄。現在、儚屋本舗オフィシャルWebメディアにて、オリジナルトラック・木版画作品などを発信しているほか、音と美女にまつわる随想録『妖盤談義』の連載、リレー小説『儚屋夜話』のプロデュースも手がけている。そんな彼が2017年晩秋、1st EPを発表した。
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本舗内でも一際謎に満ちた存在の彼だが、かつてはMC”ばさら=プロ”、トラックメイカー”immo rota”として活躍。東横マッシブのMCであるenya66の1stアルバム(2006)に客演&トラック提供、その後、儚屋本舗の前身とも言えるレーベル”STIQ”のxENTRYx、MAXIRIESのアルバム(2012)にも参加した経歴を持っている。
 
今作の客演は、玄の近所に住む同胞であるPHARMAKONのメンバーたち。幕開けとなる『草枕』、婚礼の儀に際し作られた『円奏』でラップと歌を披露している。また、ジャケットは、玄の祖父が描いた油絵に、玄が木版画で額縁を施したものである。
 
2017年11月30日より、儚屋本舗オフィシャルWebメディアにて全5曲フリーダウンロード開始。同時にSpotify・Apple Music・Google Playなど主要ストリーミングサービスでも展開する。

-Lyrics-

1.草枕

weed’n’pillow trippin’
weed’n’pillow trippin’
 
茜さすサンシャイン
橙のレイドバック
黄色い声のモンキー
苔緑ローリングストーン
青い春のムーンライト
藍色のメローアイロニー
 
purple haze in the air
purple haze in the air
 
ぬばたまのブラックムーン

2.A HOLY MOUNTAIN

ただそこにある
ここのおくそこにある
聖なる山々を拝む
一歩目から頂にいたる
ような幻覚を見せる己が刺客
 
未知なる感覚を求めさすらう
欲をかくとすぐ虎となる
一人の弱さを噛み締めて笑う
太陽に向かう
 
背をピンと張る
進む上でのヒントとなる
五臓六腑のネジを巻く
余裕綽々
永く深く静かに気を吐く
 
危険を察知
と同時に喜びもキャッチ
できる自分をジャッジ
しちゃう審判員
こそが真犯人
と悟る夕霧のまにまに
 
そういやここ来たようなさっき
ここにはサーチエンジンはなし
答えはすでに懐の中に
木枯らし吹き出す夜の帳
 
ふつふつと湧き出す疑うこころ
慄き躊躇うことも
ぜんぶ丸めて呑み込み
天の河のもと夜毎踊ろう
 
 
top of チョモランマで知る
言わずもがな座禅組んだsteez
top of チョモランマでchill
言わずもがな座禅組んで観る
 
top of チョモランマで知る
言わずもがな座禅組んだsteez
top of チョモランマでchill
 
淫らな夢といまだ不明の終点
求める旅路は無限loop
囚われの奴隷踊れや踊れ
移ろうリディムの音でmove
想像せよ
top of チョモランマでchill
グーグルマップにゃ映らぬ場所へ戻れfreeze
ホーリーマウンテン da 知らぬが仏
 
top of チョモランマで知る
言わずもがな座禅組んだsteez
top of チョモランマでchill
言わずもがな座禅組んで観る
 
top of チョモランマで知る
言わずもがな座禅組んだsteez
Mt.acid引きでもchill
長々し夜に朝ぼらけsleep

3.よあけまへ

山ぎわに
光一筋
見えにけり
ようこそここは
雲の上
何処へゆくや
鳥の群れ
 
母の涙は
嬉しさよ
兄のまなこは
黒豆か
固唾を飲んで
見守らむ
産声は
じわりひろがり
沁みわたる
 
素甘の如き
臍の緒を
切れば溢るる
血と情け
あまねくひろく
へだてなく
浮世を泳ぐ
ものであれ
 
幾重にも
夜が語らう
時の間よ
before da dawn
before da dawn

4.円奏

まるまると(まるまると)
まるまると(まるまると)
まるめまるめよ(まるめまるめよ)
まるめまるめよ わが心
まんまるまるく まるくまんまる
まんまるまるく まるくまんまる
まんまるまるく まるくまんまる
まんまるまるく まるくまんまる
 
 
曼荼羅 陀羅尼 歌うタントラ
Wonderland Unbalance Make $
だらだらアンタ怠惰そんなら
だらだら愛でる月と雪花
マラから何か出すが性なら
あんたがメラに埋めるのも性
三角四角回らないから
兎に角まろく円かなるまま
 
刹那’n’無量が織りなすBeginning Of The End
無は自惚れ
Doggy’s Awakening 知らぬが仏
片手で叩け鳴らせCrap Ya Hand
 
定家 西行 To Da 寂蓮
誰それ心みな夕暮れ
空虚無ヴァニテ もののあわれ
垂乳根MOTHER 故郷の夢
 
いちいち徒然なる日々
満ち引き導き月の光
怒り静かに燃ゆるかがり火
粗粕みそぎ水に流し
新たな実り萌ゆる命の木
食う寝る遊ぶ金も青緑
侘びず寂びずに土へお帰り
回り巡りまるっと一日

-Interview-

儚屋玄『BEATS GO AROUND』スペシャルインタビュー

(聞き手 : 儚屋玲志 a.k.a CASPERR ACE)

「『円』というか『縁』というか……一日、季節は巡るし、
人も巡り会うというような途切れない何かの話ですかね」

僕は儚屋本舗の構想を形にしていく際、一抹の迷いもなく儚屋玄に声をかけた。玄の作品を世に残さない、そんな手はないと以前から確信していたからだ。
その儚屋玄が、2017年11月30日、初となるソロ作品『BEATS GO AROUND』をフリー配信にて発表した。それは、僕が玄に対し抱く大きすぎる期待を優に超える形として届いた。このインタビューは、今作品公開直後である12月上旬、穏やかに晴れわたる昼さがりに行われた。
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⚫︎儚屋玄初の作品『BEATS GO AROUND』、本当に素晴らしい作品です。完成おめでとう、そしてお疲れさまでした。まずはそうですね、起床と就寝の時刻から聞かせてもらおうかな。
 
「朝は7時半、夜は早くて22時、遅くて2時ぐらいかな」
 
⚫︎どのような格好で寝るんですか?
 
「寝相? ルックス?」
 
⚫︎ルックスです。
 
「ユニクロのスウェットですね、グレーの」
 
⚫︎なるほど。では、今回のEP『BEATS GO AROUND』の話に入ります。このEPにコンセプトはある?
 
「ありますね。『円』というか『縁』というか……一日、季節は巡るし、人も巡り会うというような途切れない何かの話ですかね」
 
⚫︎相変わらず色氣のあることを言うね。そこにも通ずるかな、ヒップホップはどんどんアップデートされているし、その身体性からも若者が中心にある音楽だと思う部分があって。実際、僕の周りのクラブで遊んでいた人達の中にも、もうヒップホップに興味を示さなくなった人もいます。今回のEPは、『ヒップホップは若者だけが楽める音楽ではない』ということをすごく強く感じさせてくれて。それは音的にも、言葉的にも。だから、感動すると同時に勇氣づけられもして。その辺り、思うことはありますか?
 
「まさに、そこは意識していたところですね。同感というか。正直、ヒップホップばっかり聴いているわけじゃないし、落ち着いた音楽を聴くことも多いんですが、やっぱりアティテュードとしてのヒップホップが大好きで。温故知新というか、良きものを抽出して再構築する考え方。今、35歳だけど、この歳でもゆっくり聴けて、なお且つ60歳になっても聴けるものを作りたかった」
 
⚫︎その創作姿勢はまさにヒップホップだね。制作はすべてGood Luck Templeにて?
 
「はい。自宅にある作業スペースです」
 
⚫︎作品を聴いていて、その作り方がとても氣になります。詞先ですか、曲先ですか?
 
「曲にもよりますね」
 
⚫︎なるほど。では、トラックはどのように制作していますか?
 
「Pro Toolsに元ネタを流し込んでチョップしたりして作るパターン、もしくはMPCで打っていくパターン、どっちかですね」
 
⚫︎玄のトラックメイクは展開が豊富で、サンプルをふんだんに使うよね。玄が1曲作るサンプルで、僕なら3曲作る笑。儚屋本舗サイトでの玄のコーナー『妖盤談義』を読んでも思うけど、玄は音楽への造詣が深くないと出来得ないものを作っています。そもそも音楽を意識して聴くようになったのはいつ頃?
 
「小学生4〜5年の時にサザンを聴き始めたことがきっかけかもしれない……しかも現行の曲じゃなくて初期のやつとか掘ってました」
 
⚫︎僕たちの世代で初期のサザン、というのは誰かの影響があったんですか?
 
「強いて言えば父親か。いろんな音楽が家でかかってたから。サザンは、昔TBSで大晦日に必ず年越しライブをしてて、それを毎年見てたんだよね。古い曲でもヤバいのがガンガンかかっててチェックしてました」
 
⚫︎玄ダディの話は僕もよく聞くし、羨ましくも思っています。幼少期、ダディに連れられて行った山梨は白州の野外で、セシル・テイラーのピアノ演奏を目の前に爆睡してた子供だった、というエピソードは強く印象に残っています。子供を連れて、そんなところに行ってるダディも含めて。ダディの影響を感じる面は、音楽以外にもある?
 
「いっぱいあるよ。『サングラスをかけた時ほど姿勢良く歩け』とか」
 
⚫︎(爆笑、悶絶)
 
「ネパールの山奥に連れてってもらったり、色々」
 
⚫︎(息絶え絶え)刺激的なダディですね。ダディもなにか創作をしている人なんですか?
 
「学生の時には詩集を自費で出してたらしい。書、花もやってた。全部自己流で。肩書きなんて名乗ったもん勝ちだって言ってたなぁ、『書家』とか。あと、最近ではハンコ。俺が版画を作った時に最後に入れる『玄』印は親父が石に掘ったものだったり」
 
⚫︎そのダディをして玄あり、であれば合点がいく。ジャケットに話を移します。これは油絵と木版画から成っていますね。クレジットに『Oil painting by 牧村収三』とありますが、牧村収三さんとは?
 
「我が祖父です」
 
⚫︎ダディ方の?
 
「イエス」
 
⚫︎祖父と孫の合作。このジャケットは本当に素晴らしいし、裏にあるその物語もとても素敵です。是非レコード盤サイズで観たいですね。
では、ここからは1曲ずつ紐解いていこうと思います。1曲目『草枕』。ど頭から喰らわせてくれますね。まずはフィーチャリングで表記されているPHARMAKONについて教えてください。4曲目でも登場するけど、読みは『ファーマコン』でいいのかな?
 
「そう、ファーマコン、もしくはファルマコン、どっちでもいい笑。空練(クーネル)、粗粕(アラガス)、緑青(ロクショウ)の3人組なんですが、まず緑青は俺のこと。元々粗粕と俺で『夢孔(ムコウ)と緑青』というユニットを10年前に組んでいて、と言ってもライブは2回しかやってないんですが……。その2人に、空練という俺の中学1年からの馴染みが加わったんです。3人で俺の結婚式の余興でラップをしたんだけど、その時に『円奏』を作ったことが始まり」
 
⚫︎その『円奏』は4曲目に収まってますね。『PHARMAKON』 という言葉は?
 
「英語で『毒と薬を併せ持つもの』です。これは粗粕がつけた。ちなみに、検索すると、ドイツかどっかのおどろおどろしいオネエちゃんのソロアーティストが引っかかる笑」
 
⚫︎笑。そのゲルマンのネエちゃんも氣になりますね。『草枕』は音もさることながら、詩も秀逸に思います。正直初めてこの曲のラフを聴いた時、歌詞のある歌と思ってなかったんだよね。で、リリックを読んでみたら『虹の色』が隠れていておもしろいつくりだな、と。『ぬばたま』という言葉も初めて聞きました。多くの人は触れたことのない言葉だと思うけど、この言葉とはどう出会った?
 
「『ぬばたまの』が、『黒』にかかる枕詞なんだけど、元々は中学の時の古文で聞いたことはあったというレベル。曲名の『草枕』も『旅』にかかる枕詞なんだよ。丁度夏目漱石をずっと読んでて、『草枕』という作品に感銘を受けたのもひとつ。今年が彼の没後100年なんだけど、そこへのオマージュも実はある。彼も俳句をよく作っていたから。日本のクラシックへの興味が尽きなくて。この曲もその流れでできたって感じ」
 
⚫︎確かに、このEPに限らずだけど玄の作品を観ていると、そこへの興味は感じるところです。今年はJAZZが最初に録音されてからの100周年でもあるよね。100年後にも影響を与え続けるっていうのはすごい。
この『草枕』、ボーカルは玄がメインで歌って、他2人がコーラスをとっている?
 
「そうだね、一度3人でガチで録ったんだけど、ガッチャガチャになっちゃって。わたくしめが主線を取ることで落ち着きました」
 
⚫︎クレジットが 『written by PHARMAKON』 になってます。歌詞はどのように作ったんですか?
 
「歌詞は3人で、夜のルノアールで。なかなか完成しないでずっと練ってたやつなんだけどね。ベースに粗粕が枕詞を引っ張ってきて、そこに空練が遊びで色々加えたりして、最後に俺が整えるっていう流れが基本かな」
 
⚫︎ルノアールって言うと、なんかコワいイメージがある笑。トラックと歌の相性がドンピシャにハマり過ぎていて、まさか3人で練って書いた、とは思いませんでした。音の方は?
 
「トラックの元ネタも粗粕が持ってきてて。というより彼はとてつもない量のネタを保持しているから、それが都度都度俺のところに送られてくるんですよ笑」
 
⚫︎是非、粗粕の家に音楽を聴きに行きたいね。では2曲目、『A HOLY MOUNTAIN』。がっつりラップしてますね。リリックにテーマはありますか?
 
「そうですね、未知なる山を心の中に見出していて。旅で自分を見つめることってあると思うんですが、その感覚を書きたかった。『草枕』から『旅』に続くんです。夜から夜中へ続く。最後のアウトロは、ネパールの3000mの山で出会った少女のようなおばさんの歌。この時は空練と一緒だったんだよね。そして、映画『ホーリー・マウンテン』を観た衝撃冷めやらぬ時に書いた気がする」
 
⚫︎あの最後の歌、とても氣になってました。ダディとも行ってるし、ネパールには何度か?
 
「2回ですね。1回目は高校2年生のクリスマス、親父と2人で笑。2回目は5年ぐらい前かな。空練は鍼灸の仕事をしているんだけど、当時インドで東洋医学の勉強をしてたんだよね、ストリートで。で、俺が別の友達と一緒にネパールに行くから合流しよか、ってなって。で、3人で山登りをしたんだよね。1回目で水に当たってずっと下痢してたから、今回はそうならねぇぞ、っていうリベンジの意味もあった。また行きたい場所です」
 
⚫︎ゲリー・クリスマス・イン・ネパール、そしてそのリベンジ、と。ネパールの話、空練のインドのストリートの話ももっと掘り下げて聞きたいんだけど、またの機会にします。
奇しくも今月まで(2017年12月)渋谷のアップリンクでホドロフスキー特集をやっていて、僕も氣になっていたところです。『ホーリー・マウンテン』以外に彼の作品で好きなものはある?
 
「実は観てないのです。この1本だけでやられた。親父に『DUNE』のDVDをもらったから年末に見る予定。超楽しみ」
 
⚫︎ダディ、キタね笑。では、3曲目『よあけまへ』。今EPで僕はこの曲が一番好きです。僕はオフの日、朝起きると散歩に出るんだけど、この時期は陽が短いので、ちょうど『よあけまへ〜夜明け』という時間帯にこの曲を聴きながら歩きました。何故かわからないけど、泣きそうになった。美しい旋律に、あのドラム。そこに乗るあの詩(うた)。この詩に乗せた想い、というか、、、これはどういう詩なんですか?
 
「ありがとうございます。そんなことを言ってもらえるなんて嬉しいです。夜明け前、まさに子供が生まれた喜びについて書いた詩です。俺らの住んでいる世界に降り立った子に捧げました」
 
⚫︎道理で、涙腺にじゃれてくるものがすごくある。この曲は詩のスタイルとして、これまでのラップミュージックではあまり見られないスタイルだと思います。
 
「日々書き留めているものの延長ですね。あまりラップミュージックを作ろうという考えがなかったのかもしれません。試みとしては、長歌という和歌の一つの形式で、五、七、五、七……と続いて最後七、七で終わるんですけど、それに準じて書きました。ただ、万葉集あたりを読んでると、もはや五七ルールはテキトーなので、かなり優等生的な書き方になってると思いますけど」
 
⚫︎和歌の形式を用いる、その構想は元々あったのかな? それとも突発的にやってみた?
 
「もともとインストで考えていた曲だったんだけど、ちょっとそのままだと寂しいな、と。で、突発的にインパクトがあって短くて意味のあることをしたい、と考えた時に長歌という手法を閃いたんです」
 
⚫︎それはむっちゃ功を奏したと思います。インストでもイケるくらい、トラックも本当に素晴らしいけど。
 
「音については、これも映画の影響があって。ドイツのファスビンダーっていう映画監督の幻の作品が去年公開されていて、それを粗粕と観にいって。その映画のアウトロの曲があまりにも響いたから、それを使って1曲作りたかったんです。なので、トラック自体だいぶ前に出来上がってました」
 
⚫︎ちなみに、そのファスビンダー監督の幻の映画のタイトルは?
 
「『あやつり糸の世界』。お蔵入りになってしまったSF」
 
⚫︎その映画の影響というのは、サンプルネタとして? それとも映画の内容にも影響は受けてる?
 
「曲ですね。内容はあまり関係ないかな。自分が生きてる世界も誰かが糸で操っているという恐ろしい内容でしたね」
 
⚫︎ゲルマンの『トゥルーマン・ショウ』といったところでしょうか。とても氣になります。では次、4曲目の『円奏』。再びPHARMAKON名義ですね。この曲はどのようにして?
 
「元々は、円空と木喰(モクジキ)という江戸時代の仏師2人をフィーチャーした展覧会に粗粕と行って。その時に木喰上人の残した和歌で『まるまると まるめまるめよ わが心 まんまるまるく まるくまんまる』というのがあることを知って。これフックになるね、って話をしてずっと歌ってたんです。何より意味がシンプルでとても好きで。
で、俺が婚礼の儀をする時、この和歌を儀のテーマにしたんです。それで、余興で1曲作ろうってPHARMAKONの二人にお願いして。だから祝詞なんですよね。96歳のおばあちゃんもいれば、乳飲み子もいる場だから、そこで通じる曲を作ろうという目的があったんです。しかもラップで。その時は、ギター、コントラバス、カホンと3MCという編成で披露したんですよね。ラップをするならこの曲で、っていう思いがあったからまずここでやりたかった」
 
⚫︎その婚礼の儀での披露、今度はクラブで笑。先ほどから映画、展覧会などの話題になると粗粕の名があがるけど、基本的にそういう情報は彼が持ってくるんですか?
 
「結構多いですね。常にチェックしてるみたいで、貴重な情報を教えてくれます。ただ、円空あたりは俺がもともと大学生の時にどハマりしていた仏師で、日本各地に仏像を見に行っていたんです。それを粗粕と共有してて彼もハマったというか。あと空海とか」
 
⚫︎玄は僕の『音楽、アート、おもしろいカルチャーの先生』なんだけど、その玄にサンプリングネタを持ってきたり、情報を共有してたり、、、粗粕もよほどの好事家ですね。改めて、彼ともまた話がしたくなりました。
元々が乳飲み子から96歳もいるところで演るための曲だった、というのもあるのか、このサビは子供も歌えますよね。実際に子供らしき声も聞こえる。これは?
 
「もうすぐ3歳の長男です。語呂が良いから子供の耳にもスッと入ってくるみたいで。気に入ってよく歌っていたから、ヘッドフォンをつけて録音してもらいました。『まんまるまるく』って。緊張してたから、3テイクもかかったけど笑」
 
⚫︎1発録りじゃねぇのかよ。逆に、3歳手前で3テイクに耐えられるのは頼もしい。親子揃っていい声をしていますね。この曲を車で聴いていた時、特にサビの部分が90年代のヒップホップばりに僕をヘッドバンギングさせました。まさかの和歌だったんですね。それがこのようなヒップホップビートにばっちりハマるのはとても興味深い。バースの部分はかなりマイクを回してるけど、どのように書いたんですか? 
 
「これも『草枕』と一緒で、一語一語を3人でセレクトして作りました。だいぶ時間かかりましたけど。常に96歳のおばあちゃんの顔が浮かんじゃって……下手できないなって。ちなみに、おばあちゃんも『この広い野原いっぱい』を突然歌ってくれるというサプライズがあったから余興は余計気合い入りましたね」
 
⚫︎その後にラップ、はハードル高めですね。では最後の曲、『YIN YANG BACKASS』。これはイヤンバッカス名義だけど、イヤンバッカスとは?
 
「また出てくるんですけど、粗粕と俺の共同トラックメイク名義です。その1曲目ということで。イヤン=陰陽、バッカス=ギリシャの酒の神様。もしくは両面印刷機(バッカーズ)と。下ネタでもある。YIN YANG はスラングで性器、ASSはケツだしね。で、いやんばっかーん、みたいな」
 
⚫︎いちいち掛かってんなぁ。。。イヤンバッカスにおいて、玄、粗粕の役割は分かれてますか? どのような作業風景なのかな?
 
「2人でああでもないこうでもないって言いながら、MPCをいじっているだけの風景笑。俺がプロツーに流し込みながら、粗粕がネタを選んだり、パッドを叩くところを探ったり。この曲は2時間でパッと作った。ダブを作りたかったんです。しかも、和物ネタを使って締めたくて、その縛りの中で出来上がったもの」
 
⚫︎配信では5曲のEPになってるけど、ストリート用というか、手撒きされるものにはボーナストラックとして『Shadow Steppaz』という曲が収録されています。これら6曲で、自身で特に氣に入っているもの、または『これはキタ‼︎』みたいな曲はありますか? 
 
「全部気に入っているけどやっぱり『円奏』ですかね。思い入れが強いので。2年越しでできたのは嬉しかったから」
 
⚫︎それはひとしおですね。早い話だけど、次回作の予定や構想はありますか?
 
「はい、あります。まだ詳しくは固まってないけどJAZZがテーマになると思う。生音も入れたいんですよね」
 
⚫︎玄がJAZZをテーマにして作る音源。早くも待ち遠しいです。
『ミュージックルーム』『妖盤談義』をはじめ、日頃から儚屋本舗サイトでもコンスタントにアウトプットをしています。この儚屋本舗のサイトについて、自身ではどう思っていますか?
 
「自分が初めて持った表現の場、という認識ですかね。ヒップホップに限らず、否、音楽に限らず好きなジャンルが多いということ、特に『言葉』に敏感なメンバーだから刺激をもらってますね。あとは焦らず良いものを発信していきたい、そんな思いでやっています」
 
⚫︎僕は個人的に、玄からたくさんの素晴らしい作品を教えてもらっています。音楽はもちろん、映画、絵画、伝説の奇人変人才人達のこと。そんな玄が、今年出会った、またはよく聴いた曲やアルバムで特に良かったものを教えてください。
 
「古今亭志ん生の落語の CDを車に乗りながら最近聴いていて、言葉回し、声含め最高だなと思った。親父が病気した時に暇だろうと思ってがっつり買い込んでたんだけど、それがそのまま手元に戻ってきてずっと放置してて。談志あたりから聴き始めたんだけど、やっぱ志ん生すごいな、と。『業平文治』は良かった。音楽ではないけども。あ、でもイントロ、アウトロに音楽はあるか」
 
⚫︎志ん生師匠のCDは、僕も確かに車で聴くことが多い。ちなみに僕は、儚屋玄の『BEATS GO AROUND』が今年のベストです。FKJ辺りむっちゃ聴いてたけど、それ超えました。
 
「ありがとうございます。それは光栄です。正直言うけど、玲志と忍者に聴いてもらいたくて作ったところはあるからね笑」 
 
⚫︎まさに忍者と騒いでましたよ。今日は日曜日です。お互い帰ってもまだ16時くらいだと思うけど、この後はどう過ごすつもりですか?
 
「小春日和の日曜日、せっかくだから夕日を観に子供と散歩にでも行こうかな」
 
 
 
インタビューを通して、幾度か笑いをこらえきれない場面があった。この儚屋玄という男、スタイリッシュなくせに、掴みきれないおもしろさがある。それが、彼のマルチな才能に無関係だとは僕には思えない。トラックメイキング、詩作、ボーカルワーク、絵画、版画、その表現の形態を問わず、そこにいつも『絶妙なセンス』を感じる。
みなさんは、今回の『BEATS GO AROUND』を聴いて、どんな感想を抱いただろうか。僕は素直に度肝を抜かれたし、今後の彼の活動に興味津々だ。そして、自身も表現者としての帯を再度しっかりと締め直そう、そんな決意を持つと同時に、『まだまだやることはあるな』、そんな風に思った。この作品は、僕にそう思わせてくれた。

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